Episodios

  • 原油市場は景気後退を警告しているのか
    Apr 29 2025
    グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツが、値動きの大きい現在の原油市場と、予想される年内のマクロ経済シナリオについてお話します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツ本日はグローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツが、原油市場の不確実性と予想される年内の相場展開についてお話します。このエピソードは4月29日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。現在、エネルギー転換が進んでいるにもかかわらず、世界のエネルギーシステムの土台は依然として原油市場です。そして原油市場で最も重要な価格はブレント原油価格です。従って、原油価格の変動は、ガソリンスタンドのガソリン価格を当然気にする平均的な消費者だけでなく、さまざまな産業やセクターに多大な影響を及ぼす可能性があります。これを念頭に、世界の原油市場で最近何が起きているのか考えてみましょう。今月に入りブレント原油価格は急落し、わずか2営業日で終値が1バレル当たり75ドル前後から65ドルへと12.5%下落しました。下落の主な要因は2つありました。1つ目は、トランプ政権による相互関税の発表をきっかけに始まった貿易戦争が、世界経済ひいては原油需要にどのような影響を及ぼすかという懸念です。2つ目は、貿易戦争に伴い原油需要の不確実性が高まっているにもかかわらず、OPECが供給の拡大ペースを加速させ、5月の計画増産の実施を決めただけでなく、予定していた6月と7月の増産分を5月に前倒ししたことです。GDPの見通しが悪化しているときにOPECが増産すれば、これが原油価格の重荷になることは予想がつくでしょう。ではこれは何を意味するのでしょうか。2日間で12.5%下落することはめったにありません。ブレント原油先物市場が1988年に創設されて以来、これほど大きな下落を記録したのは24回だけで、そのうち22回は景気後退と同じ時期でした。このため、最近の相場下落を景気後退が迫っている兆候ではないかと指摘するコメンテーターもいます。現在、ブレント価格は直近の安値からやや持ち直していますが、足元の貿易懸念や景気の展望、OPECプラスによる原油供給の拡大見通しを反映する形で相場はなおも非常に荒い値動きとなっています。ここ数週間ですでに投機筋が異例なまで大量の売りを仕掛けています。従ってこれを踏まえると、原油価格は当面持ちこたえるのではないでしょうか。しかし、それでも年内にさらなる逆風が吹く可能性があると考えています。弊社は基本ケースのシナリオで、前年比の需要の伸びが今年下期までに日量約50万バレルに減速すると予想しています。今年に入って公表した当初予想は日量約100万バレルでした。需要鈍化とOPECプラスの増産に伴い、原油市場は年末まで日量約100万バレルの供給過多になる可能性があります。こうした見通しを鑑みると、ブレント価格はいずれ60ドル台前半までさらに下落することも考えられるでしょう。とは言え、もっと弱気なシナリオも考えてみましょう。景気後退期に原油需要が継続的に増加したことは一度もありません。このため、関税と報復関税の影響で景気後退入りすれば、原油需要の伸びはゼロに落ち込む可能性もあります。そのような状況では、弊社が現在モデルで推計している供給過剰幅は大幅に拡大し、日量150万バレルを超える可能性があります。その場合、市場の需給を均衡させるにはOPEC非加盟の産油国はもっと大幅に増産ペースを落とす必要があるでしょう。このシナリオでは、供給を必要な水準まで減速させるために、ブレント価格は50ドル半ばまで下がる必要があるかもしれません。その一方で、弊社も市場も需要の影響を過大評価している強気のシナリオもあります。原油需要が現在予想しているほど...
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    7 m
  • 投資家の防衛策
    Apr 22 2025
    市場のリスク認識の変化と、資産クラス間の資金移動が通常のパターンと異なる理由について、チーフ・クロスアセット・ストラテジストのセリーナ・タンが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。チーフ・クロスアセット・ストラテジストのセリーナ・タン マクロ経済の強い不透明感の中で投資家がどのように防衛策を講じているのか、チーフ・クロスアセット・ストラテジストのセリーナ・タンが解説します。このエピソードは4月22日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ここ3週間は世界的に市場が激しく変動し、投資家はリスクとの関わり方の再考を迫られています。このような時期には一般的に、ミューチュアルファンドとETFの資金が株式から債券に移動し、これが投資家のディフェンシブ姿勢を測る明確な基準となります。しかし、今回はこのパターンが見られません。資金は債券ではなく金(きん)に流れており、これが質への逃避を最も明確に示す確証となっています。4月3日から11日までの期間には世界全体で50億ドル近い資金が金(きん)ETFに流入し、7日間の純流入額としては史上最大規模となりました。年初来では220億ドルが金ETFに正味流入しており、運用資産総額は大凡 約2,500億ドルに達しています。過去20年間で金(きん)ETFへの流入額が多かった上位10日のうち、3日が過去1カ月に起きています。キャッシュもディフェンシブ資産への逃避がプラスに寄与しており、年初来で1,000億ドル以上がマネーマーケットファンドに流入しています。このため、年内は様々な理由からキャッシュへの資産再配分がテーマになると思われます。その理由のひとつとして、弊社エコノミストの予想では関税の影響でコアPCEインフレ率が上昇する見通しで、FRBは25年には利下げを実施せず、26年に先送りすると見込まれているためです。これはマネーマーケットファンドの高い利回りが長く続くことを意味します。そして、安全資産である米国債の低下を目の当たりにした投資家にとって、マネーマーケットファンドのボラティリティの低さはリスク・リワードの観点から国債の保有に勝る強力な論拠となります。また、別の理由として、仮に弊社エコノミストの基本ケース予想が外れ、FRBの大幅な利下げが遅れるのではなく、早まるとします。その場合は米国がおそらく景気後退の瀬戸際にいることを意味し、その状況ではキャッシュが最有力となります。このような質への逃避が見られる中で、特に想定外だったのは、高位格付けの米国債券からの資金流出です。この資金流出が特筆に値する理由は、米国債、エージェンシーMBS、投資適格クレジットが通常は低ベータのディフェンシブ資産と認識されているためです。しかし、4月7日の週には米国の高格付け債券から14億ドル近い資金が流出しました。これはコロナ禍以降で最大の流出額であり、この傾向は今後も続く可能性があります。そのため、我々はこれでアメリカ例外主義が終わるのか、自問する必要があります。米国資産から米国外資産への主役交代が起きているのでしょうか。答えは意外かもしれませんが、米国債券から資金が流出しても、米国リスク資産から米国外市場への持続的なローテーションは実際には起きていません。少なくとも、それを示すデータはまだ多くありません。米国内の株式投資家は引き続き自国資産を強く選好しており、日本と欧州の投資家は外国株式を正味で買い続けており、少なくともその一部は米国株です。現在の不透明感が続く間は、投資家のディフェンシブ姿勢が続くと思われます。ただ、何が実際にディフェンシブであるのかの評価は難題です。このところの世界的な市場の混乱は、どこにリスクがあるのかという投資家の認識の変化自体がリスクであることを示唆しています。最後までお聴きいただきありがとうございました...
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    6 m
  • 景気後退懸念が市場のワイルドカードに
    Apr 21 2025
    米国株式市場は予想レンジを突破できるか?弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、刻々と変化するトランプ政権の関税政策およびFRBの不確実性が株価の重石となり続けるのかについて検証します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン, 今回のエピソードは、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、米国株式市場が5000-5500ポイントのレンジを突破するには何が必要かについて解説します。このエピソードは4月21日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週は、アップサイドとダウンサイド両方の制約を踏まえ、S&P 500が目先、5000-5500のレンジに留まると見込む、弊社の見解を中心にお話しました。第1に、アップサイドについて弊社は、インデックスが従来のサポートである5500を超えるのは難しいと考えています。これは、最近、業績予想の下方修正が加速しており、関税交渉がどのように進展するか不透明なこと、関税その他の要因がインフレと経済成長に及ぼす影響がより明確化するまでFRBが静観すると見られるためです。同時に、株式市場はこれらすべての逆風を、コンセンサスが認識しているよりもはるかに長い間、考慮してきたとも考えています。このポッドキャストで、繰り返し取り上げて来たように、ディフェンシブ株に対するシクリカル株の比率が何よりはっきりと裏付けています。実際、シクリカルとディフェンシブの比率は1年前にピークをつけ、現在は40%以上低下しています。年初の時点で弊社は、上期の経済成長についてコンセンサス予想よりも懐疑的な見方でした。政策の順序を考慮すると、当初は大半が経済成長にとってマイナスになると予想されたため、コンセンサス予想は過度に楽観的と見られたためです。移民法の執行、DOGE(ドージ)および関税といった政策です。また、弊社業界担当アナリストの予想に基づき、前年との比較条件が最も厳しい今年上期を中心にAI向け設備投資の伸びは減速すると弊社は予想していました。1月のDeep Seek(ディープシーク)の発表によって、AI設備投資に関する投資家の懸念はさらに強まりました。経済全体の成長予想におけるAI向け設備投資の重要性を考慮すると、こうした動向は依然として投資家にとって重要な考慮事項となっています。今回のお話の重要な点の1つとして、年初時点で経済成長に対して過度に楽観的な見方が多かったのと同じように、現在、投資家は特に銘柄レベルについて過度に悲観的になっている可能性があります。シクリカル株の下落が示唆するように、今回の調整は1年近く前から始まり、株価と時間の両面で十分に進行しています。現在、S&P 500は、我々の予想レンジの中間値に極めて近い水準で先週の取引を終えており、同指数は今後の進展に対する懸念から混乱している模様です。株式市場は現在ではなく6ヶ月後がどうなるかを織り込もうとするため、この先の動きが株価を左右します。いかなる環境でも将来の道筋を予想することは極めて難しく、現在は恐らく通常よりも難しくなっているため、株価のボラティリティが高い理由も説明できます。幸い、現在の株価には景気減速のかなりの部分が織り込まれています。4ヵ月から5ヵ月前に多くが楽観していた規制緩和、金利低下、AIによる生産性向上、政府の効率改善といった要因が、今後のポジティブなカタリストの候補として残っている点は記憶にとどめておくべきでしょう。そして、市場はこれらが明確になる前に織り込むことができるのです。 ただし、現在、リセッションのリスクは大きくなりました。これは異なる種類の減速で、株価指数には完全には織り込まれていないと弊社は見ています。したがって、このリスクが高...
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    8 m
  • 関税の不確実性がクレジット市場の投資機会に
    Apr 16 2025
    米国政府の貿易政策が絶えず変わり続けているため、市場に不透明感が広がり、企業や消費者の信頼感に影響が及んでいます。ただ、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツは、このボラティリティーがクレジット投資家にとってプラスに働く可能性もあると考えています。その理由について解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ, 今回はコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、不確実性の高さがクレジットにどのようなかたちで、リスクだけにとどまらず投資機会にもなり得るかについて解説します。このエピソードは4月16日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。市場は年明けからずっと米国の貿易政策に関する疑問一色となっています。議論の中心は、この貿易政策の目標はいったい何かという難問です。 現在、米国政府が達成しようとしていることについては相反する2つの理論があります。1つは、強引な関税措置は交渉術のひとつであり、最終的な取引に向けて引き下げ交渉を進めるための強引な第一手であるというものです。 そしてもう1つの解釈は、強引な関税措置は新たな産業政策であるというものです。製造拠点を長期的に米国に移すよう企業に促すには、長期にわたる高額な関税を課すことが必要ということです。 どちらももっともらしい解釈ですし、どちらも米国政府の高官の間で議論されてきました。しかし、この2つは相いれないものでもあります。2つが両立することはありません。どちらの理論を掲げる陣営が優勢になるかは分かりませんが、この不確実性は今に始まったことではありません。2月初めの相場上昇は、関税措置はどちらかというと最初の交渉ツールだろうという楽観的な見方に関連していたようです。3月と4月に相場が下落したのは、関税がより恒久的なものになる兆候があったからでした。そして、先週は10%近く上昇する日もありましたが、こうした最近の反発は、振り子が再び戻りつつあるという希望から来るものでした。こうした堂々巡りは不確かなものです。しかしある意味、投資家にとっての評価基準にもなります。関税措置が一段と強引なものになる兆しがあれば、市場にとって厳しさが増すでしょうし、柔軟性が高まる兆しが見えれば、市場にはよりプラスとなるでしょう。しかし、それほど簡単なものでしょうか。関税引き上げの停止がより長期化する兆候が見えれば事は解決するのでしょうか。重要な疑問は、こうした一連の堂々巡りが企業や消費者の信頼感に長期的なダメージを与えているかどうかだと考えます。全ての関税引き上げ措置が一時停止されたとしても、企業や消費者はこれを信じるでしょうか。最近の相場変動の大きさを踏まえたうえで、この先数四半期にわたり、以前と同じような水準で進んで投資や支出をしようと思うでしょうか。この疑問は単なる仮定にとどまりません。さまざまな調査において、いわゆるソフトデータ、つまり米国の企業や消費者の信頼感は大きく落ち込んでいます。企業合併のペースは大幅に減速しています。投資家は今後数か月、これらの信頼感指数に特に注目するでしょう。クレジットにとって、信頼感の悪化はもろ刃の剣です。企業がより保守的になり、債務返済能力が高まるという意味で、ある程度はプラスに働きます。しかし、経済全般が弱まれば、リスクとなります。過去を振り返ると、最近目にするような信頼感調査の悪化は、将来的に成長率が大幅に低下することを示唆しています。全体的なスプレッドがほぼ平均的な水準にある中で、我々はバリュエーションが、完全にポジティブになるほど明らかに魅力的であるとはまだ考えていません。 しかし、一筋の光明...
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    6 m
  • 米国株はどこで底を打つのか
    Apr 14 2025
    関税政策が流動的である限り市場への信頼感は戻らないのか――弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが探ります。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン, 本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、先週の相場のボラティリティと今後の見通しについてお話します。 このエピソードは4月14日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。今月は、株式市場にとって大変な月になっています。しかも、まだ半分しか過ぎていません。4月の初め、弊社の関心はインフレのリスクよりも経済成長減速のリスクのほうにもっぱら向かっていました。人工知能、(AI(エーアイ))関連設備投資の伸びの鈍化、財政支出の伸びの鈍化、政府効率化省(DOGE(ドージ))、不法移民の大量送還といった向かい風に見舞われていたためです。そこに関税という、とどめの一撃が加わりました。「解放の日」がこれからどうなっていくのかをめぐって、ほとんどの投資家は前向きになれませんでした。失望するというよりは、何らかの救済措置が採られないだろうかという見方に傾いていました。4月2日に相互関税の詳細が発表されると、一連の向かい風の組み合わせは問題含みであることが判明しました。S&P500先物は同日午後の高値から翌週月曜日(7日)の朝にかけて16.5%もの急落を演じました。驚くべきことにサーキット・ブレーカーは一度も発動されず、この極度のストレス下でも市場は非常に順調に機能しました。2:03 とは言え、売却を強いられたケースも一部で見受けられ、7日には米国債、金(きん ゴールド)、ディフェンシブ銘柄がそろって下落しました。私自身は、7日月曜日は大量の商いを伴った典型的な「降伏の日」だったと考えています。実際この日は、去年 昨年12月にほとんどの銘柄について始まった調整期間の、そして多くのシクリカル株については1年も前に始まっていた調整期間のモメンタムの底であったことが判明する公算が大きいとさえみています。またそれは、たとえ一部の個別銘柄が底打ちしたとしても、主要な株価指数は先週の安値を再度試す、あるいは突き抜けて下落する公算が大きいことも意味しています。弊社では、もっと耐久性のある底値が到来するのは早くても来月、あるいは企業業績が下方修正される夏ごろになるだろうとみています。加えて、信用市場や資金調達市場が不安定にならない限り利下げや流動性の追加供給は行わないというFRBの理解を踏まえ、株価倍率は下方バイアスを伴いながら引き続き乱高下すると考えています。先週お話ししたように、市場はいま、リセッションのリスクが通常よりもはるかに高まっていると考えています。民間経済のほとんどがもう2年近く苦しんでいる事実は言うまでもなく、数多くの種類の向かい風によって景気がすでに悪化しているところに関税が追い打ちをかけてきているからです。私が見る限り、国内総生産(GDP)成長率と労働市場は3つの要因に支えられています。政府支出、消費者向けサービス、AI関連の設備投資という3点ですが、今ではこれらがすべて減速しています。ここで厄介なのは、関税による打撃が絶えず変化していることです。問題は、ダメージを受けた市場心理が回復できるか否かです。すでに指摘されているように、市場はファンダメンタルズに先んじて動いてきました。そして、データに現れてきている景気減速の予測において、今回もコンセンサスを上回る成績をあげています。S&P500種指数やそのほかの主要な株価指数の下落はだれの目にも明らかですが、実は株式市場の本質がそれ以上に明確になっています。第1に、小型株のパフォーマンスはここ4年間、大型株のそれに対して明らかに...
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    9 m
  • 相互関税の発動停止後も残る不透明感
    Apr 9 2025
    弊社グローバル債券・公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザスが、トランプ大統領が相互関税の発動を90日間停止したことによる影響について検討します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。グローバル債券および公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザス, 今回は、グローバル債券および公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザスが、トランプ大統領が発表した相互関税90日間停止の影響についてお話します。このエピソードは4月9日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。実は、本日は別のエピソードを企画しており、グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターと私が、これまでの市場の展開をご説明し、考えられるさまざまな結果を取り上げることになっていました。言うまでもなく、トランプ大統領が予定していた関税引き上げのほとんどを90日間停止すると発表したことで、事態が一変しました。このため、弊社の考察をアップデートする必要が生じました。この1週間は金融市場にとってまさに未曾有のものでした。4月2日、新たな相互関税を4月9日に発動するとのトランプ大統領の発表を受け、市場の乱高下が始まりました。既発表の関税に加えて、追って発表された中国に対するさらなる関税上乗せも加われば、米国の関税率の平均値は確実に過去100年間に見られなかった高水準になります。米国が世界貿易の縮小に取り組み、これがリセッションにつながり、今後の潜在成長率が下振れするとの投資家の懸念を反映し、当然ながら、株式市場は乱高下を伴いつつ大幅に下落しました。債券市場も大きく圧迫される兆候を示しました。債券利回りは、経済成長に対する懸念を受けて低下するのではなく、上昇し始め、市場の流動性が悪化しました。依然、その正確な根拠を突き止めるのは困難ですが、言うまでもなく、株式市場と債券市場が一緒に動くのは健全な状態ではありません。そうしたなかで相互関税の発動が停止されました。トランプ大統領は、交渉が進められるように、新たな関税の大半について発動を90日間先送りすると発表しました。そして、中国に対する関税は100%を超える水準に据え置かれたにもかかわらず、この発表は株価を押し上げるには十分でした。S&P株価指数は発表当日におおよそ 約9%上昇しました。それでは、これらはすべて何を意味するのでしょうか?私たちもまだ考えているところですが、以下に、最初の要約と、数日後に答えを出すことが重要と弊社が考える疑問点を以下に 述べたいと思います。第1に、まだ対処しなければならない不確実性がたくさん残っているため、投資家は米国の政策リスクを無視することはできません。90日間の発動停止は維持されるのでしょうか?それとも単なる先送りで関税の引き上げは避けられないのでしょうか?そして、関税発動の猶予が維持されたとしても、市場はまだ景気減速とリセッションのリスク増大を織り込む必要があるのでしょうか?結局のところ、米国の関税率は1週間前に比べてまだ大幅に高い水準にあります。さらに、今回の市場急落と経済政策の急激な変更が、消費者や企業の信頼感に影響を与えた可能性があります。筆者は今週の出張で企業のリーダー達と長い時間時間を過ごしました。皆、この不確実性の下でどのように戦略的な意思決定を行なうか、苦慮していました。したがって、数週間後に発表される信頼感の指標を注視する必要があります。ノイズに混ざった1つのシグナルは中国に関するものです。具体的には、米国がサプライチェーンの安全保障改善と財の貿易赤字削減を望んでいるため、中国との交渉は難航すると見られ、最終的に他の諸国に比べて高い関税がより長期間続くと見られます。実際にそうした展開が進んでいる模様ですが、弊社が予想したよりも、速いペースでより厳...
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    7 m
  • クレジット市場における新たな懸念
    Mar 28 2025
    ファンダメンタルズの悪化によってクレジット市場のマクロ変動性に対する耐性が低下する中、コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツは、クレジット投資家にポートフォリオの質を見直すよう提案しています。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ. 本日の話し手は、コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツです。クレジット市場の足元における回復が一時的なものにとどまる可能性があり、これを機にクレジット・ポートフォリオの質を引き上げるべきと考える理由についてお話しします。 このエピソードは3月28日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。市場が不安定なとき、心理的な要因による変動と、実質的な要因による本当の変動を区別し、それぞれの度合を解析することは常に難しい作業です。私の同僚で米国株式チーフ・ストラテジストのマイク・ウィルソンが今週皆様にお話した通り、米国株が売られ過ぎた可能性をいくつもの指標が示唆している現在、米国株式市場は足元で回復する可能性があると私たちは考えています。しかし、クレジット市場に関しては、回復は一時的なものにとどまると考えています。経済成長および物価トレンドが好ましくない方向へ向かう可能性があるなど、クレジット市場の中期見通しを取り巻くファンダメンタルズが年初予想とは異なる道筋を辿っているからで、こうした中、クレジット投資家は市場の一時的な回復を機に、ポートフォリオの質を引き上げるべきと私たちは考えます。少し前の2025年初頭、私たちは今より遥かに幅の広い経済シナリオを想定し、米国経済成長の2026年における本格的な減速を予想していました。どちらもクレジット市場にとって好ましい結果をもたらす見通しではありません。しかしその一方、私たちはそうしたリスクが浮上するまでに幾らか時間がかかるとも考えていました。実際、2025年に入った頃の米国経済にはかなりの勢いがあり、こうした中、米国政府が政策を変更したとしても、その影響が本格化し、実体経済の行方を変えるまでには時間がかかると私たちは見ていたのです。 また、2025年初頭のクレジット市場には、魅力的な利回り、旺盛な需要、安定した財務指標など、追い風要因がいくつもありました。こうした追い風要因を踏まえ、私たちは今年初め、ほかの資産クラス市場のボラティリティが高まったとしても、クレジット市場のマクロ変動性に対する耐性はほとんど損なわれないと考えていました。しかし現在、ファンダメンタルズの悪化を背景に、クレジット市場のマクロ変動性に対する耐性は損なわれていると私たちは確信するようになりました。米国政府による政策変更が、私たちの予想以上に大規模かつ急速に進められているからです。そしてそれが一因となり、私たちの経済成長率、インフレ率、政策金利それぞれに関する予想は、どれもクレジット市場にとって不利な方向へと転じ始めました。すなわち、私たちは現在、今年初頭より低い成長率、高いインフレ率、少ないFRBによる利下げ回数を予想するようになったのです。予想をこのように変更したのは、私たちだけではありません。例えば最近発表されたFOMC経済見通しの最新版を見ると、FRBもこれまでより成長率予想を引き下げ、インフレ率予想を引き上げたことが分かります。一口で言えば、モルガン・スタンレーの経済予想は、私たちが考える困難なシナリオ、言い換えるなら、成長率が低下する一方でインフレ率が引き続き高い水準で推移する中、中央銀行が経済を支えるために利下げをためらうシナリオの実現可能性を高めているのです。成長率の低下、インフレ率の上昇、中央銀行の政策による支援の乏しさを見込む困難な...
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  • 市場がどこまで反発できるのか、鍵を握る指標
    Mar 24 2025
    弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、先週のFOMCを踏まえた投資の見通しを検討し、株式市場が最近の調整から本格的に反発できるか予測する上で重要なシグナルを列挙します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン. 今回は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、最近の株価上昇と、それが持続可能な理由についてお話します。このエピソードは3月24日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週のFOMC会合の結果に多くの市場参加者は安堵したようです。というのは、パウエル議長はFRBの使命において経済成長の重視を若干強め、インフレに対する懸念を重要視しなかったように見えたためです。FRBはまた、バランスシート縮小のペースを若干緩めることも決定しました。この展開は一部の予想より早いもので、FRBが必要に応じて行動する体勢にあることがうかがわれます。今後について見ると、現在、投資家の注目はもっぱら相互関税の発表が予定される4月2日に集まっています。これがカタリストとなって関税の税率や対象となる国や製品の範囲が一段と明確になる可能性はありますが、これですべてが決まるのではなく、むしろ関税交渉の出発点になると弊社は考えています。要は、労働市場が大幅に軟化するか、クレジットおよび資金調達市場が一段と不安定になる必要があるとは見られるものの、FRBプットは、トランプ・プットよりもイン・ザ・マネーに近いように見えます。これまでのところ、DOGEによる人員削減は、新規失業保険申請件数や全体の失業率といった指標にはほとんど影響を与えていません。大半に解雇手当が支給されるため、職員のレイオフから失業者として表われるまでに時間がかかる可能性もあります。労働市場に関するより重要な疑問は、最近の株価下落、信頼感の低下および経済や貿易の不透明感の強まりが、民間部門のレイオフにつながるのかどうかです。弊社エコノミストの基本ケースでは、こうした要因が今年は失業サイクルにはつながらないと想定しています。しかし、雇用者数、失業保険申請件数および失業率は、今後の見解にとって極めて重要な、注視すべき情報とみています。 通常通り、S&P 500株価指数だけを見たのでは、株式市場の調整の度合いを完全に説明することにはなりません。先週申し上げたように、株式市場は2022年の弱気相場と同じ程度の売られ過ぎになりました。これが底なのか、それともより厳しい状況の始まりなのでしょうか?経験から申し上げますと、株価のモメンタムが底にある局面で、ボラティリティが終息することは稀です。ただし、こうした状況から力強く上昇する可能性もあります。これが、3月13日にS&P 500が上期の予想取引レンジの底である5,500ポイントをつけた時に、弊社が上昇の始まりを予想した理由です。その後これまでに、より低クオリティ、高ベータの銘柄が先行する形で株価は反発してきました。目先はこれが持続し得ると弊社は見ています。ただし、去年 昨年11月以降低調な業績修正を考慮し、中期的にはよりクオリティの高い銘柄をポートフォリオの中核とするのが良いとの見解に変わりはありません。より具体的には、米国の業績予想修正の主な平均値は1年を通じてまだマイナスにとどまっており、底入れの兆しは見られません。しかし、水面下では業績予想修正トレンドに興味深い変化が見え始めています。その最も顕著な変化は、急激に低下したマグニフィセント7の業績予想修正が、下げ止まったように見えることです。これにより決算発表シーズンを前に、目先、超大型株のアンダーパフォーマンスに歯止めがかかり、2週間前から弊社が予想しているように、S&P 500の下げ止...
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    7 m
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