Episodios

  • ボイスドラマ「梅花藻/後編(飛騨一之宮編)」
    Oct 9 2025
    1934年、高山本線が開業したばかりの飛騨。久々野から宮峠を越え、二人がたどり着いたのは聖域・飛騨一宮水無神社。前編で出会った“女スパイ”梅花藻と少年りんごは、臥龍桜/夫婦松/水無神社に散らされた暗号を手がかりに、山上の奥宮へと向かいます。待ち受けるのは、陽炎を創設した男・蛇(オロチ)。そして、国の命運すら揺るがす「ある秘匿物」の真相。後編は、りんごのモノローグが中心。リンゴを分け合うささやかな時間、臥龍桜のしめ縄に潜む数字、そして奥宮での決断。スパイ・アクションの緊張感と、少年のまっすぐな祈りが同時に走る、ヒダテン!屈指のエピソードです。<『梅花藻(バイカモ)』後編「飛騨一之宮編」>【ペルソナ】・少年りんご(12歳/CV:坂田月菜)=岐阜から高山線に乗り込んできた尋常小学校の低学年・梅花藻(25歳/CV:小椋美織)=コードネーム梅花藻(ばいかも)。政府の諜報機関「陽炎」所属・春樹(ハルキ=62歳/CV:日比野正裕)=蛇の同級生。詩人であり小説家。父は水無神社宮司・蛇(オロチ=62歳/CV:日比野正裕)=諜報機関「陽炎」を作った人物。逃げた梅花藻を追う【プロット】【資料:バイカモ/一之宮町まちづくり協議会】https://miyamachikyo.jp/monogatari/pg325.html・時代設定=高山本線が開業した1934年(10/25全線開業)・陸軍省が国防強化を主張するパンフレットを配布し軍事色が強まる・国際的には満州国が帝国となり溥儀が皇帝に即位・ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた※一部が梅花藻のモノローグ、二部はりんごのモノローグ<プロローグ/宮峠の鞍部にて>◾️SE/秋の虫の声/森の中を歩く音/近くに流れる沢の細流(せせらぎ)「はあっ、はあっ、はあっ・・」「りんごクン、大丈夫?もうヘバっちゃった?」梅花藻のお姉さんが意地悪そうに笑う。「宮峠を越えたらもう宮村だから」そう言ってボクの手を引く。ボクたちはまだ、出会ってから24時間も経っていない。この道行(みちゆき)が始まったのは、昨日。母さんの葬式の真っ最中から。(葬式の最中、見知らぬ男たちが父さんを連れ去った。「久々野のおじいちゃんに届けるように」そう言って父さんがボクに託したのは母さんの遺骨。ボクは一晩中逃げたんだけど、岐阜駅で知らない男たちに捕まってしまった。気づけば汽車に乗せられて、高山本線で富山へ。助けてくれたのは、一人の女の人。梅花藻という名前のお姉さんがたった一人で悪者をやっつけちゃったんだ。お姉さんは、故郷の宮村へ向かう途中だと言った。久々野と宮村。目的地が近かったからボクたちは一緒にいくことになった。でも、どうして悪者はボクを追ってくるのか。それに気づいたのもお姉さん。お姉さんは、母さんの遺骨の中から、一枚の地図を見つけた。それがなんなのかわかんないけど、悪者はそれを探してたんだと思う。だっておじいちゃんのりんご農園へ帰ったときもやつらがいたんだもん。お姉さんが知らないうちにやっつけてくれたけど。用事を終えたお姉さんは、ボクを置いて一人で水無神社へ行こうとしたけれどボクはお姉さんを追いかけた。だってボクは決めたんだ。お姉さんについていこうと)父さんが悪者に連れ去られたり、ボクも汽車に乗せられたりといろいろあったけど。いまはこうして手をつないで、宮村への山道を歩いてる。「なに独り言つぶやいてるの?」お姉さんは、覗き込むようにボクに顔を近づける。「そろそろ分水嶺だから、少し休もうか」「うん。久々野の飛騨リンゴ。食べようよ」「そうね。こっちへ」リンゴを投げると、お姉さんは片手で受け取る。そのまま片手でトランクのヒンジを開けて・・さっと取り出したのは刃渡りのおおきな果物ナイフ。あっという間にリンゴを八等分にして僕に手渡す。「いい香り。食べる前から美味しい、ってわかるわ」「そりゃそうさ。おじいちゃんちの飛騨リンゴは世界一だから」「ほんとね。間違いない」(※食べながら)「これからどこへ向かうの?」「まずは、飛騨一宮水無神社」「どうして?」「見て」お姉さんが見せてくれたのは、父さんが残した地図。...
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    20 m
  • ボイスドラマ「梅花藻/前編(久々野編)」
    Oct 2 2025
    1934年、高山本線開業の日。非公認諜報機関「陽炎」から逃げた女スパイ・梅花藻は、久々野へ向かう汽車の中で少年りんごと出会う。母の骨壷に隠された地図、そして迫りくる追手――。飛騨のリンゴ畑を舞台に繰り広げられるスリリングな物語。後編(一之宮編)へ続く。【ペルソナ】・梅花藻(25歳/CV:小椋美織)=コードネーム梅花藻(ばいかも)。政府の諜報機関「陽炎」所属・少年りんご(12歳/CV:坂田月菜)=岐阜から高山線に乗り込んできた尋常小学校の低学年・春樹(ハルキ=62歳/CV:日比野正裕)=蛇の同級生。詩人であり小説家。父は水無神社宮司・蛇(オロチ=62歳/CV:日比野正裕)=諜報機関「陽炎」を作った人物。逃げた梅花藻を追う【プロット】【資料:バイカモ/一之宮町まちづくり協議会】https://miyamachikyo.jp/monogatari/pg325.html・時代設定=高山本線が開業した1934年(10/25全線開業)・陸軍省が国防強化を主張するパンフレットを配布し軍事色が強まる・国際的には満州国が帝国となり溥儀が皇帝に即位・ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた※一部が梅花藻のモノローグ、二部はりんごのモノローグ<プロローグ/東京・蒲田の陽炎の諜報施設>◾️SE/走る足音・銃声・虫の声はぁ、はぁ、はぁ・・・あと少しで蒲田駅。そこまで行けば、あとは・・・海軍の施設や工場が集積する蒲田。看板もなにもない木造の施設が廃墟のようにたたずむ。それが、私を育てた組織「陽炎」の本部。育てた?いや、正しく言えば、私をつくった組織。創業者のオロチに言わせると私は、工作員として史上最高の傑作らしい。コードネームは、梅花藻。ついさっきまで「陽炎」のトップエージェント、女スパイだった。そう。「陽炎」が解体されると知るまでは。1934年。ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた。一方・・満洲国という傀儡国家を作り、アジアでの地位を築こうとする日本。非公認の諜報機関について都合が悪い状況が増えてきた。結論は、歴史の闇に葬り去る。存在そのものを抹消する、ということらしい。いち早く情報を入手した私は、上官を撃って施設から脱走した。ためらいなどない。そう教えられてきたのだから。◾️SE/銃声一発/工場のサイレン/遠くに響く汽笛よし、これで追っ手はすべて消えた。蒲田まで行けば、国鉄で品川、東京へ。そのあとは・・・?「さすがだな、梅花藻。だが、この蛇から逃げられると思うなよ」◾️SE/東京駅の雑踏東京駅にとまっていたのは2つの特急列車。南回りの「櫻」と北回りの「富士」。同じ時刻に東京駅を発車して「下関」に向かう寝台特急である。私は中央西線経由の「富士」に乗ったように偽装。サングラスをはめ、変装して東海道線の「櫻」に乗り込んだ。空いていたのは一等寝台。まあ、そのくらいの蓄えはある。ああ、疲れた。横になりたい。だが決して油断はせず。古びたトランクを右手側に置いて体をコンパートメントのベッドへ預けた。<シーン1/岐阜駅>◾️SE/蒸気機関車の汽笛/岐阜駅の環境音/機関車転車台の音/ハイヒールの音転車台の上を機関車が回転する。東海道線の要衝、国鉄岐阜駅。私は東京発下関行きの特急「櫻」を途中下車した。まだ暗い早朝だからほとんど人はいないだろう。と思ったら大間違い。ガス燈の薄灯りに照らされた構内はかなりの人出。そうか。今日、高山本線が開通したんだ。いや。この混雑。私にとっては都合がいい。駅構内を入念にチェック。一人でホームに立つ女性など、目立って仕方がないからな。ふむ。高山で乗り換えて富山まで。なるほど・・・感じるものがあって、私は高山行きの列車に乗り込んだ。<シーン2/高山線車内/少年との出会い>◾️SE/蒸気機関車の汽笛/狭軌蒸気機関車車内の音(No.532452)ゆったりした二等客車の先頭。私は進行方向とは逆の座席に腰掛けた。スパイの習慣。後方の三等客車から二等車両へ入ってくるものはほとんどいない。逆に前方の二等車両から入ってくるものはすべて視界に納められる。敵が現れても瞬時に対応できる体勢。流れ去る景色をじっくり見られるのも大きい...
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    20 m
  • ボイスドラマ「LOBO★マイフレンド〜国道沿いで拾った子犬はまさかのニホンオオカミだった!?」
    Sep 25 2025
    知られざる最後のオオカミの物語──その名は「ロボ」舞台は、飛騨高山・久々野町。国道沿いの草むらで母を亡くした一匹の“子犬”と、年長さんの少女・りんごが出会うところから物語は始まります。成長とともに、次第に周囲から「異質な存在」として扱われていくロボ。しかし、りんごにとってロボは“友だち”であり“家族”であり、かけがえのない存在でした。守るために牙をむいたとき、愛するがゆえに手放さなければならなかったとき、子どもと動物の間に芽生えた絆が、あなたの心に静かに火を灯します。そして最後に、明かされるロボの“本当の正体”。これは「もういないはずの命」と「小さな命」の奇跡の物語です。【ペルソナ】・LOBO(0歳〜)=りんごに拾われた狼の子ども(CV=坂田月菜)※「lobo」はスペイン語で「狼」・りんご(5歳)=久々野町の幼稚園年長さん。(CV=坂田月菜)・ママ(28歳)=りんごのママ(CV=岩波あこ)・パパ(32歳)=りんごのパパ(CV=日比野正裕)・ニュースアナウンサー=宮ノ下さん(カメオ)【参照:日本オオカミ協会】https://japan-wolf.org/faq/<シーン1/久々野町・国道41号沿いの草むら>◾️SE/急ブレーキの音と狼の悲鳴※りんごのモノローグは主観ではなく客観的な視点「おかあさん!おかあさん!どうしたの?なんで返事してくれないの?」久々野町、国道41号線沿いの草むら。車に跳ねられ、飛ばされた野犬が横たわっていました。その横には、小さな子犬が1匹。冷たくなった母の乳房をしゃぶりながら泣いています。濃い茶色の体毛。長い脚。尻尾は丸く湾曲して、耳は短い。やがて、乳が出なくなった母の亡骸から子犬は離れていきます。ふらふらと国道に歩いていきました。「あぶない!」「えっ?」目の前を、おおきなトラックが走り去っていきます。子犬は女の子に抱えられて、一緒に道の端で尻餅をつきました。女の子の名前は、りんご。この春、5歳になったばかりの年長さんです。「よいしょっ・・」と、お尻の土を払って立ち上がったりんごは「あぶなかったねー」と言って、子犬の頭を撫でます。子犬は抱っこされたまま、牙を剥きました。「ウ〜ッ」「こら、助けてあげたのに怒っちゃだめでしょ。りんご、年長さんになったから知ってるもん。親切にされたら『ありがとう』って言うんだよ」「くう〜ん・・」「よしよし。もう道路に飛び出しちゃだめだよ。じゃあね。ばいばい」りんごは、抱っこした子犬を草むらに戻しておうちに帰っていきました。ところが・・・「おかあさん・・・」りんごのあとを少し離れて、子犬はついてきちゃったのです。おうちまであと少し、という農道。踏切を越えて果樹園の前を通ると、葉摘み(はつみ)をしているおじさんがこっちを見て笑っています。りんごが振り返ると、後(あと)についてきているのは、あの子犬。距離を保ったまま、子犬も止まっていました。「あれぇ?ちびちゃん、ついてきちゃったの?」りんごはしゃがんで、子犬を手招きします。子犬は・・・少し悩むような顔をしてからゆっくり近づいてきました。「どうしよう・・・ママ、犬、きらいって言ってたよなあ・・」「ねえ、いい子にできる?」子犬はなんにも言わずにりんごを見ています。「できるよね?」子犬はりんごを見て、首をかしげています。「もう〜。いい子にしないと、追い出されるんだってば!」りんごが頭を撫でると、子犬は初めてすり寄ってきました。<シーン2/久々野町・りんごの家>◾️SE/食卓の音「ちゃんとりんごが自分で面倒みるのよ」意外なことに、おかあさんは、飼うことを許してくれました。もちろん、りんごは大喜び。おとうさんが、子犬に名前をつけました。ふた文字で「ロボ」。りんごは、あんまり気に入りませんでしたが、飼えることになったので、文句は言えません。それからは、ロボの世話で大忙しの毎日。朝、りんごが目を覚ますと、ロボはベッドの横。黙ったままじいっと座っています。ダンボールで作った寝床はいやみたい。りんごは背伸びをして体を起こし、ロボを抱っこして、お外へ。「おしっこだよ〜」声...
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  • ボイスドラマ「美女と天狗〜奥飛騨温泉郷・上宝の平湯温泉にある天狗橋と天狗岩の伝説?」
    Sep 18 2025
    愛は呪いを解く鍵となるのか。奥飛騨の伝承「天狗岩」と「天狗橋」をモチーフに描かれる、幻想的で切なくも温かい“嫁入り譚”。親を亡くし、絶望の中で人柱となった少女・箏と、山の神の怒りによって姿を変えられた大天狗。二人の出会いは、呪いと運命を変える大きな転機となる──。現代の高校生・マコトとストーリーテラー・シズルの会話を通じて語られる、どこか懐かしくて、新しいファンタジー。終盤に訪れる“静かな奇跡”に、あなたもきっと心を奪われることでしょう。【ペルソナ】・シズル(35歳)=道の駅 奥飛騨温泉郷上宝のストーリーテラー(CV=日比野正裕)・マコト(17歳)=高根町の高校生。郷土史研究部=部員1名の部長(CV=山﨑るい)・箏(こと=17歳)=伝承の中で天狗に嫁入りする美女(CV=山﨑るい)・天狗(年齢不詳=35歳)=奥飛騨温泉郷上宝に住む天狗=もののけ(CV=日比野正裕)【参照:天狗岩/奥飛騨温泉観光協会】https://www.hirayuonsen.or.jp/article.php?id=10170<プロローグ/道の駅 奥飛騨温泉郷上宝>◾️SE/奥飛騨温泉郷の環境音「むかぁし、むかし。君が生まれるより、ずう〜っとずっとずっとむかし。この奥飛騨温泉郷・上宝には天狗が住んでいました」「(ゴクッ)」※唾を飲み込む音「天狗って知ってるかい?」「うん。知ってるよ。顔が赤くて、鼻がこ〜んなに長い妖怪でしょ」「妖怪?まあ、間違ってはいないけど・・」「妖怪じゃないの?」「妖怪、っていうよりもどっちかって言うと、神様に近いかな」「神様!?だから神隠しとかするんだ」「ああ〜。そうかもね。でもほら、京都の鞍馬寺とか栃木の古峯神社(こぶじんじゃ)とかは有名でしょ」「ふうん。知らないけど」「『天狗』って、元々は中国から伝わった言葉なんだよ。天(あま)かける狗(いぬ)と書いて、隕石や流れ星のことだったんだ」「すご〜い!シズルさん物知り〜」「大人をばかにするんじゃないの。今日はね、『天狗の嫁入り』というお話だよ」「やった!」道の駅 奥飛騨温泉郷・上宝で毎月1回開催される「昔話の読み聞かせ」。奥飛騨温泉郷・上宝の施設が持ち回りで担当している。今月は、新穂高温泉の、うちの施設がストーリーテラー。で、私が、読み聞かせするってわけ。まあ、昔、仕事でよくプレゼンをしてたから、人前でしゃべる、ってのは嫌いじゃないんだけど。今日は初日で平日だから、第一部のお客さんはたった1人。高根村から来た17歳の高校生マコトくん。なんでも、郷土史研究部の部長なんだって。部員は一人だけど?そうですか〜。今日の話、実は私の創作、フィクションなんだ。平湯温泉にある、天狗岩や天狗橋にインスパイアされて作った物語。ほら、さっきもマコトくんが言ってたじゃない。天狗って妖怪だって。神隠しとか、あまりいいイメージじゃないよね。私が天邪鬼だから、ってわけじゃないけど、ストーリーはそんなイメージを払拭するもの。なんとファンタジー作品なんですが・・「ちょっとシズルさん。早く続き、教えてよ」「ああ、ごめんごめん。じゃあ続きね」<『天狗の嫁入り』シーン1/人柱>◾️SE/村の雑踏「その村には20年前から天狗が住んでいました。天狗に対して村人たちが一番恐れるのは、神隠し。今まで何度も子供や娘が天狗にさらわれていたのです。そのため、毎年1回、秋祭りのときに、天狗に人柱をひとり捧げていました。人柱となるのは、村の最高齢の老人。娘や子供の格好をして、人柱になっていたのです。ところが今年、人柱になるのは、17歳の少女、箏(こと)。この春、箏の両親は山崩れに巻き込まれて命を落としました。それから箏は天涯孤独に。自暴自棄となり人柱として名乗り出ました。村人たちは箏を一生懸命説得しますが、無駄でした。箏は、人柱として慣例通り天狗橋を渡り、天狗岩へ登っていきます。岩の上に寝転ぶと、目を閉じました。<『天狗の嫁入り』シーン2/箏と天狗>◾️SE/深い山中のイメージ横になった箏を包み込むように、いきなり風が吹きました。目をあけると、そこは空の上。天狗岩は笠ヶ岳の雲の上に浮かんでいました。...
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  • ボイスドラマ「お助け小屋の鬼婆〜ならず者には容赦なく少女たちには母のような優しさを持つ伝説の”ばさま”」
    Sep 11 2025
    命を懸けて少女たちを守った、ある“ばさま”の物語。吹雪の夜、命からがら辿り着いた工女たち。山賊に追われ、給金も誇りも奪われそうになったとき、小さな峠の小屋に現れたのは「鬼婆」と呼ばれる年老いた女性だった。男衆には容赦なく、少女たちには母のような優しさを。鋭くも温かなまなざしで、すべてを背負った“ばさま”の姿に、胸が熱くなります。明治の日本を影で支えた工女たちと、名もなき守り人——どうぞ心してお聴きください。【ペルソナ】・鬼婆(年齢不詳70歳)=野麦峠お助け小屋の主、男衆には厳しく工女に優しい(CV=山﨑るい)・政井辰次郎(22歳)=飛騨の河合村出身。河合村政井みねの兄(CV=日比野正裕)・政井みね(14歳-20歳)=かつて野麦峠を越えた工女のひとり(CV=山﨑るい)・山賊(30-40代)=野麦峠を根城とする山賊・追い剥ぎ(CV=日比野正裕)【原作:山本茂美「あゝ野麦峠 ある製糸工女哀史」(角川文庫)】※32頁〜https://amzn.asia/d/eEQROC8<シーン1:1903年・冬の晩1>※シーンはすべて野麦峠のお助け小屋/ソマ衆=野麦の原始林で働く屈強な木挽きたち◾️SE/吹雪の音〜木戸を激しく叩く音/外から響く山賊の声「おおい!開けろ!鬼婆さ!いるこたぁわかってる!開けねえと、ぶち破るぞ!」◾️SE/関を引いて木戸を開ける音「るっさいな、いま何時やと思うとる」「おい!ばばあ!小屋に工女が逃げ込んだろう。今すぐここへ連れてこい!」「はあ?そんなもんはおらん!帰れ!」「嘘こいたらただじゃすまんぞ。中をあらためさせてもらうからな!」◾️SE/奥の方で物音「ガタン」「なんだぁ〜、いまの音はぁ?」「ふん。知りたいか。下衆どもが」「なんだと?」「おおい!ソマ衆やぁ!降りてこいやぁ!」「なっ、なに!?」「ソマ衆や!夜食の握り飯できとるで!」「ソマ衆だとぉ!?」「20(ニジュー)しか間に合わなんだで、1人2個じゃ!文句はこいつらに言うとくれや!」「くそっ、お、覚えてろよ!また来るからな!」「二度と来るな!」◾️SE/木戸を強く閉め、関をかける音「ばさま・・」「しいっ!」「ひっ・・」※エキストラ/固唾を飲む「・・・うん、よしよし。もういいだろう。おまえら、大丈夫やったか?」「はい、ありがとうございます。でも・・」「なんだ?どうした?」「給金が・・」「なに!?」「キカヤからもろうた一年分の給金・・わしら、トトマ、カカマの喜ぶ顔を思うて雪の峠越えてきたのに・・山賊たちにとられてしもうて・・もう会わす顔がねえ・・」「いくらだ?」「わしが九十五円五十銭、フデが七十二円十五銭イクが十七円六十九銭、トモが七円四十銭じゃ」※エキストラ/すすり泣き「そうか、わかった」「わかった、ってばさま・・・」わしはそう言って、板張りの床を開けて、脇差を取り出す。「ばさま!?」「相手は2人やな」「はい」「ちょこっとだけ待っとけ。鍵をしっかりかけて、誰が来たって死んでも開けるでねえぞ」「そんな・・・」「心配せんでええ。わしを誰やと思うとる。野麦峠お助け小屋の鬼婆さやぞ!2人ばかしの下衆どもにはやられはせん」「ばさま!!」※エキストラ/驚いて「ばさま!」工女たちの声を背中で受けて、わしは吹雪の中へ出掛けていく。ときは1902年。そう、あれは1時間ほど前のこと。暮れも押し迫った吹雪の夜。工女たちが泣きながらお助け小屋に駆け込んできた。検番もつけず、身ひとつで実家に帰っていく工女たち。懐には、必死で働いた一年分の給金袋。工女の多くは貧しい百姓の出である。年の瀬に家に帰って給金を渡せば、父や母は『これで年が越せる』と泣いて喜ぶ。その金を狙って山賊たちが集まってくる。ただでさえ、命を落とす工女が絶えぬ野麦峠。無垢な少女を狙う外道どもをわしはどうしても許せなかった。<シーン2:1903年・冬の晩2>◾️SE/囲炉裏の音〜「遅なったの。すまんすまん」「ばさま!」※エキストラ/心配からの嬉しみ「ばさま!」「さあさ、甘酒飲んであったまりぃや」「ありがとうございます!これ・・わしらの給金まで・・」※エキストラ/「ありがとうございます」「...
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    20 m
  • ボイスドラマ「ホリデー/後編」
    Sep 4 2025
    前編で荘川を訪れたよもぎに続き、今回はさくらが朝日町を体験します。薬膳や薬草、そして美女高原に広がる空の下で、彼女は新しいインスピレーションを得ていきます。そして――村芝居の舞台で訪れる運命の再会。偶然の出会いから始まった休日交換は、やがて必然の再会へ。荘川と朝日、二つの里の魅力を舞台に、物語は感動の結末を迎えました。この物語が、あなた自身の旅のきっかけになれば幸いです。【ペルソナ】・さくら(28歳)=荘川の村芝居に出演、伝統芸能に興味ある静かな女性(CV=岩波あこ)・よもぎ(28歳)=薬膳カフェのオーナー、芯の強い漢方薬剤師(CV=蓬坂えりか)・朝市のおばちゃん(40歳くらい)=宮川朝市で花の苗を売る女性(CV=小椋美織)<シーン1:高山濃飛バスセンター>◾️朝のバスセンターの雑踏/ステップを降りて深呼吸するさくら「ふう〜っ!気持ちいい〜!」荘川の支所前から高山の濃飛バスセンターまで1時間20分。路線バスの旅って楽しい〜!おのぼりさんみたいに、大きなスーツケースを抱えてバスを降りる。しかも、今日は私、浴衣姿!って、見ればわかるよね。白地に桜の花が満開の浴衣柄。ヒノキのエッセンシャルオイルをさっと振って。エアコンが効いてるバスの中は、浴衣だけだとちょっと寒い。だから薄い羽織を重ねてる。ほら、これも素敵でしょ。透け感のある、淡い桜色の夏羽織。ステップを降りて時計を見ると・・8時前か・・・◾️朝の町を歩く足音まだ陣屋前の朝市は開いてないから、国分寺通りを宮川へ。朝市なんて何年ぶりだろう。なんだかドキドキする。今日の目的は、村芝居のあしらい探し。ここだけの話だけど、今年のテーマはファンタジー。お花の精たちが集まって、夏の終わりを告げる人情時代劇よ。設定はいつものように江戸の元禄時代。え?よくわかんない?じゃあ、見に来てよ。荘川まで。スケジュールは観光協会のサイトに載ってるから。私の役は、桜の精。クライマックスには季節はずれの桜吹雪が舞うんだよ。相手役は、江戸からやってきた役人。ロミジュリの江戸時代版って感じかな。舞台の小道具、あしらいはやっぱり、お花がいいよね。艶やかな花魁たちには、ハイビスカスやアサガオ。恋人役の男の子は・・ひまわり!いろんなお花売ってるといいな。◾️朝市の雑踏「すみません」「はい、いらっしゃい」「ヒマワリってありますか?」鍛治橋(かじばし)に近いお店。お花の苗を売っているおばちゃんに、腰をかがめて話しかける。そのときおばちゃんの前に座っていたのは・・・ミズバショウの柄のグリーンの浴衣を着た女性。手にはラベンダー?の苗。大きなトートバッグを背負って(しょって)・・観光客かしら。おばちゃんは私に向かって、人の良さそうな笑顔で、「切り花かい?うちには切り花は置いてないわなあ。もう少し待てば、陣屋の市が開(あ)くで。あっちに確か切り花の店があったわ」「そうですか・・ありがとうございます。行ってみます」私は浴衣が汚れないよう、裾をひるがえして歩いていく。◾️足音「まって」「はい?」声をかけてきたのは先ほどの女性。浴衣の裾にミズバショウが咲いている。「お花を探してるんですか?」「ああ、はい。今度・・お花を題材にしたお芝居をやるんです」村芝居だけど・・・「お芝居?劇団の方ですか?」「あ、そんなたいしたものじゃないです。ただの趣味で・・」だから村芝居なんだけど・・・「それで高山まで?」「ええまあ・・・そんな感じ」私のこと、自分と同じ観光客だと思ってる?ま、荘川からきた観光客、と言えなくもない。荘川も高山市なんだけど。ふふ。「貴女(あなた)は?さっきラベンダーを持ってらっしゃったみたいだけど」「ええ、白花ラベンダー。ハーブティーにしたり、入浴剤にするとリラックスできますよ」「そうなんですか・・」「はい。私、薬膳カフェをやっているので」「まあ素敵。お似合いよ」「ありがとう。このあと陣屋前の朝市へ行かれるんでしょ。よければご一緒にいかがですか?」「本当ですか?」「私も見たいものがあったので」「...
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    27 m
  • ボイスドラマ「ホリデー/前編」
    Aug 28 2025
    飛騨高山を舞台に描かれる、女性二人の“休日交換”の物語。宮川朝市での偶然の出会いから、アプリ「ホリデーシェア」を通じて始まる不思議な体験。薬膳カフェを営むよもぎが、荘川町で見つけた新しい風景と心の揺れをお楽しみください。【ペルソナ】・よもぎ(28歳)=薬膳カフェのオーナー、芯の強い漢方薬剤師(CV=蓬坂えりか)・さくら(28歳)=荘川の村芝居に出演、伝統芸能に興味ある静かな女性(CV=岩波あこ)・朝市のおばちゃん(40歳くらい)=宮川朝市で花の苗を売る女性(CV=小椋美織)<シーン1:高山市街地の宮川朝市から>◾️朝市の雑踏「よもぎちゃん!朝市くるのひさしぶりやな!まめやったか?」「まめまめ!おばちゃんも元気やった?」「今日は何さがしよる?」「薬膳の材料でなんかいいの、ないかな、と思って」「白花(しろばな)ラベンダー、あるで」「ホント?やたっ!」「苗やから、一株もってけ」早起きして来てよかったわ〜、宮川の朝市。3か月に1回くらい。夏から秋へと向かうこの時期は、体調を崩すお客さん、多いから。市場にはあまり出回らない食材を、生産者から買いにくるの。今日はラッキー。花の苗売るおばちゃんに会えたし。なんと白花(しろばな)ラベンダーにも出会えるなんて。イングリッシュラベンダーの貴重な白花。ハーブティーにすれば、香りだけで癒されそう。アロマを抽出して、カウンセリングルームに置いとこうかな。癒しを求めて朝日に来たお客さんもきっと喜ぶわ。「すみません」「はい、いらっしゃい」「ヒマワリってありますか?」季節外れの桜の花が私の前を横切った。上品な檜の香りがかすかに漂う。顔を上げると、腰をかがめておばちゃんに話しかけているのは・・・桜柄の清楚な浴衣を着た女性。桜色のスーツケースを引いて・・観光客かしら。薄紅色の帯も素敵。「切り花かい?うちには切り花は置いてないわなあ。もう少し待てば、陣屋の市が開(あ)くで。あっちに確か切り花の店があったわ」「そうですか・・ありがとうございます」彼女は浴衣の裾をひるがえして、颯爽と歩いていく。◾️遠ざかる足音「まって」「はい?」「お花を探してるんですか?」「ええ、そうですけど・・」つい声をかけてしまった。浴衣姿に見惚(みと)れてしまって、なんて言えない。「今度・・お花を題材にしたお芝居をやるんです」「お芝居?劇団の方ですか?」「あ、そんなたいしたものじゃないです。ただの趣味で・・」「それで高山まで?」「ええまあ・・・そんな感じ。貴女(あなた)は?さっきラベンダーを持ってらっしゃったみたいだけど」「ええ、白花ラベンダー。ハーブティーにしたり、入浴剤にするとリラックスできますよ」「そうなんですか・・」「はい。私、薬膳カフェをやっているので」「まあ素敵。お似合いよ」「ありがとう。このあと陣屋前の朝市へ行かれるんでしょ。よければご一緒にいかがですか?」「本当ですか?」「私も見たいものがあったので」「よろこんで」私たちは肩を並べて宮川沿いを歩いた。言い忘れてたけど、今日は私も浴衣姿。蓬色の浴衣の裾には水芭蕉が咲いている。まるで桜の花とよもぎの青葉が並んでいるような色合い。でも、彼女はスーツケース。私はショルダータイプの大きなトートバッグ。少し厚手のキャンバス地に、ナチュラルレザーのワンポイント入り。私だって、どう見ても観光客だ。はは。たまに外国人観光客が振り返る。せせらぎの音が気持ちいい。<シーン2:よもぎのシェアハウスでアプリインストール>◾️虫の声シェアハウスへ帰ってから、朝市で買ったものをまとめてみた。赤かぶは、すりおろしておろし汁に。体を温める薬膳スープのアクセントになる。朴葉の樹皮は漢方薬に。丹生川のトマトは薬膳スープにもスムージーにもいいな。荏胡麻(えごま)は、血液をサラサラにしてくれる。あとは・・荘川のそばの実、か。これは一緒に陣屋前朝市を見た彼女のセレクト。素敵な女性だったから、つい聞いちゃったのよね。高山の食材で何が一番いいと思う?って。そしたら・・・荘川のそば。だって。...
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    18 m
  • ボイスドラマ「ハッピーアグリーデイ!」
    Aug 23 2025
    春の出会いが、夏の実りへとつながっていく。飛騨高山・国府町で生まれた、もうひとつの“ももの物語”。『桃花流水〜夢に咲く花』の続編、ボイスドラマ『ハッピーアグリーデイ!』では、収穫の季節を迎えた飛騨桃の果樹園を舞台に、ももと農家のおじいちゃん・おばあちゃんの心あたたまる交流が描かれます。農作業を通して生まれる絆、季節のうつろい、そしてラストに訪れる小さな奇跡──“もも”がどこから来たのか、彼女が運んできたものは何だったのか。国府町の風景とともに、優しい余韻に浸ってください。物語は「ヒダテン!Hit’s Me Up!」公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Apple Podcastなど各種プラットフォームで配信中。小説として「小説家になろう」でも読むことができます。(CV:高松志帆/日比野正裕/桑木栄美里)【ストーリー】[シーン1:7月末/収穫の始まり】<飛騨もものモノローグ>むかしむかし。飛騨の国府(こくふ)という町に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに・・じゃなくて、自分の果樹園に桃の収穫に出かけました。ではおばあさんは?川へ洗濯へ・・行きたかったのですが、腰を痛めたおじいさんと一緒に果樹園へ出かけていったのです・・■SE/ニイニイゼミの鳴き声(初夏のセミ)<おばあさん> 『今年はほんとにあっついなあ、おじいさん。まだ7月やっていうのに』おじいさんは目で返事をします。あたり一面に漂う、うっすらと甘い香り。2人は籠を片手に、丁寧に桃を摘み取っていきます。低いところに実った桃はおばあさん、高いところに実った桃を獲るのはおじいさんの役目ですが・・獲ったあと痛くて腰をかがめないので、大変そう。『おじいさん、すごい汗やな。大丈夫か』『ああ、だいじょう・・・うう』大丈夫じゃなかった。熱中症。そりゃこの暑さだもの。仕方ないけど。力の抜けたおじいさんをおばあさん1人で家まで連れていくのは大変でした。家に着いて、おじいさんを寝かせ、ひと息ついたところで、おばあさんもぐったり。『残りの収穫はもう明日以降でいいやな。熟してまってもしょうがない。わしまで倒れたらどもならん』しばらく休んだあと、よっこらしょ、と立ち上がり、お勝手へ。一服しようと、お茶を沸かしているときでした。『こんにちは』『ん?誰かいな』『あの・・夏休みで高山へ遊びにきた大学生です』『ほうほう』『もも、と申します』『もも!?そりゃそりゃ、めんこい名前やわ』『こちらの農園の方ですか?』『ああ。うちには、わしとおじいさんと、2人しかおらんで』『ほかには?お子さんとかいないんですか?」『おらん。息子は30年前、高校生のとき家を飛び出して東京へ行ったわ。それきり音沙汰もない。よっぽど、畑仕事が嫌やったんやろなあ』「そうなの・・・実は、飛騨ももの収穫体験をさせていただこうとお邪魔したのですが』『収穫体験?桃の?』『はい、グリーンツーリズムで』『なんやて?グリーン・・・』『グリーンツーリズムです。農業体験をしながら農家へ泊まらせていただくこと』『そんなもんがあるんかい?そりゃしらなんだ』『でも、やってるとこ、どこもいっぱいなんですって」それであのう・・・申し訳ありませんが・・・よければ、収穫のお手伝いをしながらこちらに泊めていただけませんか?』『なに?うちに?』『あ、いきなりごめんなさい。もちろん、宿泊代はお支払いします』『いやいや、お金なんていらんやさ。それよりこんな汚いとこに泊まらんでも』『きれいじゃないですか、埃ひとつない』『布団も煎餅布団しかないし』『そんなの関係ありません。飛騨ももの収穫を手伝わせてください!』『いやあ、ちょうどおじいさんが熱中症で倒れてしまってな。しばらく作業を休もうかと思ってたんや』『そんな。桃が熟しちゃう』『そうやな』『私じゃ全然お役に立てないけど、これも何かの縁だと思いませんか』『う〜ん・・』『私、こう見えても、立ち仕事には慣れてるんです』『でもなあ・・』『ヘバったり、泣き言言ったりしません』『そうか・・』『お願いします』[シーン2...
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