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  • おかめのはなし 著者:小泉 八雲/田部 隆次 訳 読み手:福井 慎二 時間:12分34秒
    Aug 13 2025

    おかめのはなし

    著者:小泉 八雲/田部 隆次 訳 

    読み手:福井 慎二 

    時間:12分34秒

     土佐の国名越の長者權右衞門の娘おかめは、その夫八右衞門を非常に好いていた。女は二十二、八右衞門は二十五であった。余り夫を愛するので、世間の人は嫉妬の深い女だろうと思った。しかし男は嫉妬されるような原因を作った事もなかった。それで二人の間にはいやな言葉一つ交された事もなかった。

     不幸にしておかめは病身であった。結婚後二年にもならないうちに当時土佐に流行していた病気にかかって、どんな良医も匙を投げるようになった。この病気にかかる人は、喰べる事も飲む事もできない、ただ疲れてうとうとして、変な夢に悩まされているだけであった・・・

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    13 m
  • 星の銀貨 著者:グリム兄弟/楠山 正雄 訳 読み手:福井 一恵 時間:4分14秒
    Aug 12 2025

    星の銀貨

    著者:グリム兄弟/楠山 正雄 訳 

    読み手:福井 一恵 

    時間:4分14秒

     むかし、むかし、小さい女の子がありました。この子には、おとうさんもおかあさんもありませんでした。たいへんびんぼうでしたから、しまいには、もう住む にもへやはないし、もうねるにも寝床がないようになって、とうとうおしまいには、からだにつけたもののほかは、手にもったパンひとかけきりで、それもなさ けぶかい人がめぐんでくれたものでした。
     でも、この子は、心のすなおな、信心のあつい子でありました。それでも、こんなにして世の中からまるで見すてられてしまっているので、この子は、やさしい神さまのお力にだけすがって、ひとりぼっち、野原の上をあるいて行きました・・・

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  • 非情な男 著者:山川 方夫 読み手:野中 美木子 時間:11分9秒
    Aug 11 2025

    非情な男

    著者:山川 方夫 

    読み手:野中 美木子 

    時間:11分9秒


    私は顔をあげた。やはり彼女だった。
     窓ごしに彼女の眼が、哀願するように私をみつめている。
     開けてくれというのだ。
     黒い窓に、彼女は音をたてる。しだいに強く、執拗に、その音がつづいている。
     彼女は身もだえをし、全身で私に合図している。
     ……だが、私には彼女を部屋に入れてやる気は毛頭ない。だんじてない。そんなことをしたら、かえって面倒なことになってしまうだけだ。
     この深夜、ここまで単身でやってくるというのは、彼女にしたらたしかにたいへんな決意だっただろう。それはわかる。恐怖も躊躇もかなぐり捨て、彼女はむきだしの本能そのものに化し、ただ闇雲にそれに忠実になることに自分を賭け、・・・


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  • 月夜とめがね 著者:小川 未明 読み手:水谷 ケイコ 時間:14分12秒
    Aug 10 2025

    月夜とめがね著者:小川 未明 読み手:水谷 ケイコ 時間:14分12秒


    町も、野も、いたるところ、緑の葉につつまれているころでありました。
     おだやかな、月のいい晩のことであります。しずかな町のはずれにおばあさんは住んでいましたが、おばあさんは、ただひとり、窓の下にすわって、針しごとをしていました。
     ランプの火が、あたりを平和に照らしていました。おばあさんは、もういい年でありましたから、目がかすんで、針のめどによく糸が通らないので、ランプの 火に、いくたびも、すかしてながめたり、また、しわのよった指さきで、ほそい糸をよったりしていました・・・


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    14 m
  • 土俵の夢 著者:尾崎 士郎 読み手:三田 朱美 時間:15分14秒
    Aug 9 2025

    土俵の夢著者:尾崎 士郎 読み手:三田 朱美 時間:15分14秒


    去年(昭和二十一年)の歳末、鈴木信太郎さんがひょっこりやってきて一杯飲みながら、いろいろな画を描いていってくれた。鈴木さんがびっこをひきながら私の住む伊東の町はずれまで来るのは並大抵のことではなかったであろう。口に出してこそ言わなかったが私の流謫生活を憐れみ、私を慰めるためにやってきたのである。私は感興のうごくにしたがって鈴木さんに勝手な注文をしいろいろな画をかいてもらった。鈴木さんはこんど帝展の審査員になったそうであるが、そんなことは鈴木さんの画家としての価値にいささかも増減を加えるものではなく、私は唯、鈴木さんのような人柄のひとが審査員になったということを世間通俗の人情の上でよろこばしいことだと思っている・・・

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    15 m
  • 黄金風景 著者:太宰 治 読み手:西村 文江 時間:11分40秒
    Aug 8 2025

    黄金風景著者:太宰 治 読み手:西村 文江 時間:11分40秒


    海の岸辺に緑なす樫の木、その樫の木に黄金の細き鎖のむすばれて   ―プウシキン―

     私は子供のときには、余り質のいい方ではなかった。女中をいじめた。私は、のろくさいことは嫌いで、それゆえ、のろくさい女中を殊にもいじめた。お慶は、のろくさい女中である。林檎の皮をむかせても、むきながら何を考えているのか、二度も三度も手を休めて、おい、とその度毎にきびしく声を掛けてやらないと、片手に林檎、片手にナイフを持ったまま、いつまでも、ぼんやりしているのだ。足りないのではないか、と思われた。台所で、何もせずに、ただのっそりつっ立っている姿を、私はよく見かけたものであるが、子供心にも、うすみっともなく、妙に疳にさわって、・・・

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    12 m
  • 十年後のラジオ界 著者:海野 十三 読み手:二宮 正博 時間:8分12秒
    Aug 7 2025

    十年後のラジオ界著者:海野 十三 読み手:二宮 正博 時間:8分12秒


    「ときにAさん。」
    「なんだいBさん。」
    「十年経ったら、ラジオ界はどうなる?」
    「しれたことサ。ラジオ界なんてえものは、無くなるにきまってる。」
    「へえ、なくなるかい。――今は随分流行ってるようだがネ。無くなるとは、ヤレ可哀相に……。」
    「お前は気が早い。くやみを言うにゃ、当らないよ。僕はラジオ界がなくなると言ったが、『ラジオ』までが無くなるとは、言いやしない。」
    「ややっこしいネ、Aさん。そんなことが有り得るものかい。」
    「勿論サ、Bさん。人間の生活に於ける水や火のように、これからの世の中は、ラジオがすべての方面の生活手段に、必需的なものとなってゆくのだ。『ラジオ界』などという小さい城壁にたてこもることが許されなくなる・・・

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  • 絵筆に描き残す亡びゆく美しさ 著者:上村 松園 読み手:宮崎 文子 時間:3分12秒
    Aug 6 2025

    絵筆に描き残す亡びゆく美しさ著者:上村 松園 読み手:宮崎 文子 時間:3分12秒

     京の舞妓の面影は、他のものの変り方を思えば、さして著しくはありませんが、それでもやはり時代の波は伝統の世界にもひたひたと打ち寄せているようです。髪の結方とか、かんざしとか、服装の模様とかが、以前に比べると大分変って来ています。髪なんか、昔の純京風は後のつとを大きく出して、かたい油つけをつけたものですが、近ごろは、つとも小さくなり油つけもつけないでさばさばした感じのものになってしまいました。
     かんざしも夏には銀製の薄のかんざしをさしたもので、見るからに涼しげな感じのものでした。今も銀の薄のをさしてはいますが、薄の形が変って来て、昔のように葉がつまっておらず、ばらばらになってきています・・・

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