wisの与謝野晶子(1)『全訳源氏物語』より「若菜 上」
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wis(ないとうさちこ)
源氏物語の「若菜 上」の巻は、光源氏が四十歳頃の、絶頂期であると同時に衰運の始まりとなる時期を描いている。栄華と老い、女性たちの嫉妬と悲しみ、前世からの因縁などが絡みあう。
出家を間近に控えた朱雀院は、後ろ盾のない愛娘・女三宮の将来を深く案じ、源氏へ彼女を託すことを決める。源氏は最終的に承諾したが、それまで正妻的地位にあった紫の上は激しく動揺。表面上は穏やかに女三宮を迎える準備を進めるものの、内心では深い悲しみに沈み、次第に出家を願うようになっていく。
年明けに女三宮が降嫁するが、源氏は彼女のあまりの幼さと頼りなさに失望を禁じ得ない。そんな中、源氏はかつての恋人である朧月夜が実家へ戻ったことを知り、密かに再会。帰宅したところ、それまでとは違う紫の上の冷ややかな態度に戸惑う。一方、内裏の明石の女御は懐妊し、六条院で無事に東宮の男御子を出産。明石の一族は最大の栄華を極め、源氏の四十賀も世を挙げて盛大に執り行われた。
しかし、その栄華の裏で悲劇の幕が上がる。かねて女三宮との縁談を望んでいた内大臣の息子・柏木は、彼女への未練を断ち切れずにいた。三月末、六条院で開催された蹴鞠の催しに訪れた柏木は、飛び出してきた唐猫が御簾を跳ね上げた一瞬、その奥に佇む女三宮の姿を偶然垣間見てしまう。この運命的な「垣間見」をきっかけに、柏木の恋心は狂おしいほどに募り、やがて源氏の平穏を揺るがす禁断の事態へと突き進んでいく。
【底本】与謝野晶子「全訳源氏物語」(角川文庫版中巻)
©2026 響林社 (P)2026 響林社
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